ブラックブック(監督:ポール・バーホーベン)

 運良く某映画情報サイトにて試写会に当選したので、汐留まで見に行ってきた。

 上映開始前にポール・バーホーベン監督自らの舞台挨拶があった。1944年ナチス・ドイツ占領当時のオランダ当時の状況や制作費(2000万ドル)、この映画の見所などを聞くことができたが、これは非常に贅沢なことに思う。

 バーホーベン監督は質問以上の回答を一生懸命にオランダ訛りの英語で話してくれたが、印象としては、背が高く、気さくで、人柄の良いおじさんという感じだった。インタビュアーに、本作を含め、これまで彼が製作してきた映画に出てくるような「強い女性」は彼のタイプなのか?といった質問を受けていたが、案外そうでもないらしい。理由は「奥さんがいるから」とのことだったが(笑)、巷の映画のヒロインにありがちな「主人公のそばにいるだけ」の女性というものよりも、映画全編をしっかりと、一人でも歩んでいけるような、そういった存在感のある女性を描いてきたいと監督は仰っていた。

 映画のあらすじは公式サイトをご覧頂きたい。

 印象としては、非常に「内容の充実した作品」だった。見てよかった、と思える作品。戦争を描いた作品としても、人間の心の葛藤を描いたヒューマンドラマとしても、アクション映画としても、サスペンスとしても成り立っているように思えるので、そういった意味では全くもってカテゴライズされない映画である。上映時間は2時間24分とのことだったが、スピード間があり、展開にダレた部分が全くない。故に時間を気にすることなく、最初から最後まで目が離せなかった。

 舞台セットなどの環境はもちろんんこと、個々の人物描写、心の葛藤に至るまで、戦時下の描写がとても巧く、こだわりを感じた。そのリアリティゆえに、戦争を体験したことがない私も、改めて「戦争は恐ろしいものだ」という念を抱かされた。戦争には「国の勝敗」があったとしても、どちらが正しくてどちらが間違っている、というものがない。戦っている者たちはごく普通の人間で、その普通の人間たちが互いを殺しあう。そこから生まれるのは憎しみであり、憎しみから生まれるものは「苦しみの連鎖」しかない。善悪の境界さえなく、狂乱状態である。そんな狂乱状態において「自分だったらどうするだろう?」と登場人物と自分を重ね合わせていくうちに、どんどんと映画の世界に入り込んでしまった。白黒のないこの狂乱状態は、きっとハリウッドには描けないだろう。

 主人公ラヘルを演じるカリス・ファン・ハウテンの演技が素晴らしい。歌唱力があり、機転が利き、勇気があるが心の葛藤に苦しむ女性を見事に演じている。やり場のない怒りや苦しみを懸命に押さえ、耐え抜く強い女性。迫真の演技とは、まさにこのことか。

 映画の終わり方も印象的だった。ネタバレになってしまうので詳しくは書かないが、戦争と平和に関して、改めて「問い」を投げかけられたような気がする。

 抜けがなく、こだわってしっかりと製作された映画、という印象があるので、どなたが見ても見事にハマる映画ではないだろうか。お奨めです。

2007年3月24日より新宿テアトルタイムズスクエア、渋谷アミューズCQN他にてロードショー!

◆第79回アカデミー賞 外国映画賞 オランダ代表作品
◆第63回ベネチア国際映画祭 コンペティション部門出品
 ヤングシネマアワード:ベストインターナショナル・フィルム賞受賞
◆2006オランダ映画祭 作品賞/監督賞(ポール・バーホーベン)/主演女優賞(カリス・ファン・ハウテン)受賞

関連サイト
映画「ブラックブック」公式ホームページ
映画「ブラックブック」公式ブログ~バーホーベンはお好き?~
Pauk Verhoeven.net