映画「ピエロがお前を嘲笑う」をみた

2014年のドイツ映画。邦題がめちゃくちゃイケていないが、現代は「Who Am I – Kein System ist sicherだそうだ。ふーあむあい以降の読めそうなドイツ語は、「安全なシステムはない」の意。2014年の映画であるため、ハッキングをテーマにした名作ドラマシリーズの「MR.ROBOT」より前の作品である。

映画としては称賛する声も多いのだが、ソーシャルエンジニアリングを用いた二重のトリックであったり、物理アクセスを主体としたそれっぽいハッキングシーンなのだと思う。個人的にはなんの捻りもないありきたりな映画にみえてしまって、残念だった。特にハッキング手法にはリアリティが欲しかったが、この手の映画にそれを求めても仕方ないかもしれない。

安全なシステムがないことは認める。ソーシャルエンジニアリングが有効な手段であることも。一方で、あからさまな物理アクセスとその容易な様は、フィクション映画としても結構ありえないというか、ツッコミどころしかないわけで。没入感の観点で、フィクション映画にもいっていのりありてって必要でしょう。それが全くないので拍子抜けしてしまうのだ。

あと映画とはいえ、ハッキング行為をかっこよく取り扱うな、とは言いたいね。

映画「バクラウ 地図から消された村」を観た

一言で言えば見所がたくさんあって良かった。

面白かったかと言えば面白いんだが、それよりもこのような映画が世の中に出てきて、それが普通に観られる世の中そのものが良かったな、と。

なので今回は、この「良かった」なる曖昧かつ適当、稚拙、そしてシンプルな言葉を使ってレビューしたい。

まず個人的には、非常に馴染みのないブラジル映画である。映画といえばハリウッド、そして欧州諸国、アジア諸国のものはよく観るものであるが、南米なのだ。冒頭の葬儀シーンからして、純日本人な私としては、その文化の違いをまじまじと見せつけられて実に良かった。

冒頭といえば、オープニングにスタッフロールのようなものを少しつけてくるあたりや、10社を超えるであろうスポンサーなんだか関係会社なんだかのロゴを表示してくるあたりも良かった。このまま映画が終わるんじゃないかとも思ったが、そう思う時点で私はハリウッド的な映画の構成に慣れ親しみすぎているんだと痛感した。

牧歌的なストーリーで、全く展開が進んでいない雰囲気さえ感じさせてくれるわりには、後半になって、その牧歌的な雰囲気の背景にある狂気をちらつかせてくれるあたりもとても良かった。展開が読めそうで読めない、そして驚きがありそうでないのも魅力。

バイオレンス作品に傾いた途端、何よりもバイオレンスしているところも良かった。あんなに見事に頭が吹っ飛んだシーンはこれまで観たことがない。

また、全てを語らずとも、描写そのものでその意味を誰にでも理解させられる点は、監督や脚本の優れた手腕が感じられて良かった。これは映画が映画であることの魅力だ。

なお、Netflixでは、本作品が「SFサスペンス」にカテゴライズされていた。SFなシーンはどこかな?と楽しみにしていたが、たぶんそれは「空飛ぶ円盤」型のドローンが映る点くらいしかない。

つまり全くSFしていないのだが、だからこそこの作品に出会えたともいえるので、そんな適当なカテゴライズそのものも良かった。

映画そのものに対する価値観は、多種多様であることを学べる作品でもある。ハリウッド映画のアンチテーゼと採れば、そう採れなくもない。一風変わった映画、というやつを観たい人には是非おすすめしたい。SFサスペンスではない点も含めて。

映画「アド・アストラ」を観た

そう遠くない未来、地球外生命体の探索のために冥王星に飛び立ち、そして消息を絶った父を、その息子が人類の存亡をかけた危機の回避と、父を探すという二つの目的のために、これまた宇宙に飛び立つというストーリー。

説明が冗長になったが原因不明の大規模なサージにより、人類が危機に瀕しており、その原因がお父さんなんじゃないの?だから息子くんメッセージ送ってやめさせたげてよという話。ちなみに父がトミー・リー・ジョーンズで息子はブラピだ。

トミー=宇宙人という発想はきっと日本人にしかできないが、彼は本作では限りなく宇宙人に近い地球人を演じている。

で、ストーリーそのものは別段面白いものでもない。また、例の如く唐突に現れる凶暴化した宇宙猿や、初代ガンダムの大気圏突入シーンを彷彿とさせるブラピの宇宙遊泳シーンやら、とんでもシーンが多くてその辺りは笑いどころでもある。

一方で、実に秀逸だなと思った点は、静かなる宇宙、孤独なる宇宙、そして孤独なる我ら地球人をしっかりと描写している点である。主人公の心の平静とも共通するような、少し悲しささえ感じさせる宇宙の静けさの表現が実にうまい。だからストーリーそのものがありきたりであっても、最後まで飽きずに観れてしまうのだ。

なお、リブ・タイラーも出演している。もはや日本人にとって往年のスター枠にも入る3人の出演で、結構な豪華さを感じる。リブ・タイラーは年老いても全く変わらず美人である。父親譲りで口がデカくて良い。

映画「いつかの君にもわかること」を観た

早く家に帰って、大切な家族のとの時間を、もっと大事にしよう。一言で言えば、そんなふうに思える映画。

ストーリーは至ってシンプル。余命宣告をされたシングルファザーが、自分がこの世からいなくなった後のことを考えて、4歳の息子の里親探しをするという話。

実にシンプルなストーリーだけれども、その誰しもが主人公と自らの人生を重ねて観てしまう。それはきっと子供がいるとか、いないとかに限らないだろう。

死は誰しもに訪れるものだから、その普遍的なテーマが、私たち観るものに深い印象を残す。そして人生とは何か、死ぬということは何かと考えさせられるのだ。

最後まで描ききらないのもいい。とても深いテーマに対して、真摯に、丁寧に向き合っていて、あらゆる描写に製作者側の配慮を感じる。

こういう映画を、良作というのだろう。その感覚は、きっと、間違いない。

映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」を観た

現時点でワールドワイドでの興行収入1000億円を超えた本作、どんなものなのかなと思い、観てきた。おひとり様ではなく、子供を連れての映画鑑賞であり、吹き替え版を鑑賞。

結論としては、ストーリー軽視、表現力最重視の作品で、ストーリー重視な映画が好きな私としてはなんとも言えない印象が残ったが、映像作品としては実際にゲームをやっているかのような映像の作り方が、とても印象に残った。わかりやすく、観客を置き去りにせず、丁寧に作り込まれていると思う。だから子供向けとして良い。

ファミコン世代としては、そもそもスーパーマリオブラザーズがどんなストーリーか、あるいはマリオが登場する様々なゲームをもちろん把握しているわけだが、そのストーリーやらゲーム性ともやんわりと整合をとりながら丁寧に作られていて、音楽面も含めてすごいなー、という観かたをしてしまった。前知識がそこそこある分だけ、純粋に映画として楽しめていないのかもしれない。

売れている映画が面白いとは限らないってのは、アバター他が証明してると思うが(アバターファンの方すみません)、マリオというキャラクターそしてゲームの魅力が、世界中でこれほどに興行収入の面を牽引してるのって本当にすごいことで、私としても純粋に任天堂の大成功が喜ばしい限りです。本当、すごい会社だよね。

子供は純粋に楽しんでいたし、なによりキャラクターは全部かわいくて魅力的だったので、その点は良かったかな。映画として良いとか悪いとかではなく、観る人によって賛否両論あるのはどの映画でも同じだが、本作はより顕著にそれが現れてるのではないだろうか。

任天堂様、この勢いで、ぜひゼルダの映画化を…

レビュー:マトリックスレザレクジョンズ(15点)

ネタバレは含まない。ちなみに結論から言えば駄作なんだよね。つまらなくて途中で少し寝た。

まずマトリックスってのはシリアスな作品だと思っていたのだけれど、今回パロディな要素をふんだんに取り入れてしまったのよね。それがファンサービスなのかは知らないが、必要なかったな。

パロディ要素は確かに前3部作をそれなりに観た人にとっては笑えるシーンは少しあったんだが、実に低俗なのよね。マトリックスって、もっとこう観る人の理解力を試すような、高尚な要素があったでしょ?それがない。

ついでにバレットタイムの生みの親であった本作の特徴の一つには、アクションの派手さはもちろん、映像美があったとおもうが、これまた全くない。

キャストも、テキトー過ぎるんよ。ネオとトリニティは外せないのはもちろん、モーフィアスはオリジナル使えっての。だってモーフィアスだよ?モーフィアス重要でしょ?どうも前作のモーフィアス役のローレンス・フィッシュバーンには声がけすらしなかったらしいのよね。何考えてるのかな?エージェント・スミスもね。

脚本、ギャグ要素満載でテキトー。アクション、凡庸。演出、特徴なし。展開、スリル一切なし。配役、ありえない。

マトリックスよ、アリーヴェデルチ!

レビュー:イカゲーム (88点)

イカゲームを全話観た。結論から述べると、意外にも面白かった。話題になるわけだ。

まずストーリー。人生いろいろな失敗し続けているダメ人間なおじさん(離婚して実家に戻った、言わばこどおじ)が、大金を得るためにとあるゲームに挑むことになる。そのゲームとは、実は命をかけた子供遊びであり、参加者たちの命はまるでなんの価値もないかのように、次から次へと失われ…

という、カイジとCUBEとバトルロワイヤルとを足して3.6で割った感じの映画である。

この時点で、先が読めるストーリー展開ではあるのに、何故か妙に惹きつけられるものがあり、時間を忘れて観続けてしまうのだ。

それはなぜかといえば、実にスタイリッシュな舞台設定があり、チープさを感じさせない舞台装置のクオリティがあり、その上で、それぞれ個性が強烈でもある俳優たちのリアリティのある演技のおかげなのだ。

私は特に韓国映画が好きでもないが、仮にもし同じシナリオで邦画を作ってみたとしたら、チープでわざとらしい作品になるであろうことは想像に容易い。そのくらい、すごい。うん、語彙力が足りない。

なのでこの作品で改めて分かったことは、映画とは単にシナリオを楽しむものではない、ということ。呆気にとられる展開など別に不要。たとえ分かりきった展開だとしても、いかにそれを魅せるかによって、観客としての作品に感じる面白さというものは変わるのだ。その点ではすごくシンプルに面白さを追求した作品でもある。

展開こそベタだが、観る側に対して、それを待ち望ませるほどの魅力を提示できるのであれば、それはとても良い作品になる。

映画とは、創る側のモノでもあり、観る側のモノでもある。それを感じさせるような、両者のぶつかり合いがある作品は、きっと良作なんだろう。

レビュー:オキシジェン (54点)

Netflixオリジナル作品。名前の如く、残り少ない酸素残量の中でどのように生き延びるか…的な酸欠モノである。いやそんなジャンルないけども。

この作品のすごいところは、106分という時間のほぼ全てが同じ空間(超低温ポッド)で、たった一人の女優にて演じられるところだ。

もちろん本作の核のひとつてでもある回想シーンでは、他の人物や他の場所は出てくるのだが、それを除いてもほぼ一人、ほぼ一空間である。これで106分持つんかいな、と疑問に思っていたのだが…結果、持ちました。

一般にはSFスリラーやサスペンスに分類されると思われる。徐々に謎が明かされていくストーリーは、最後まで気になる展開ではありながらも、蓋を開けてみれば、ありきたりだったなとの印象は残る。

なので本作の見どころはストーリーそのものではなく、出演者1人、演じる空間は一空間という前提で、どこまでやりきれるかという点に尽きるのではなかろうか。

その点では…うん、やりきった。がんばりました。お疲れ様でした。

レビュー:ザ・ディスカバリー (48点)

Netflixオリジナル作品。

最近SF映画鑑賞の強化期間なんだけども、これはSFとカテゴライズするのは無理がある作品で、ラブロマンスとかそっちに近いと思われる。

話としては「死後の世界の存在が証明された未来」が舞台なのだが、これだけ聴くと「なにそれ丹波哲郎の大霊界?」と思ってしまう人は昭和な人なので、少しは大人しくしていましょう。

本作において、死後の世界とは、すなわち来世のこととされているらしく、来世に「行く」ためだけに、大量の自殺者が出ているそうな。でもさぁ、それが確証されたとして死ぬ気になるもんかな?どんな形で証明されたの?という疑問を持ちながら、ただ淡々と進んでいくストーリー。

話の展開のスピードが終盤になって上がるところだけは面白い。ただ結末があまりにもベタで、安っぽいタイムループもののアニメみたいになってしまったのが残念。

題材はよかったんだけどな。

レビュー:ライフ (51点)

Netflixで観た。

ライフ、なんていうタイトルの映画は死ぬほど多くありそうだけれど、SFホラー系映画のライフのことなのだ。ちなみにこれね。

この映画の特徴は、人類の中でも最もエリートたる存在である宇宙飛行士たちが、ありえないくらいお馬鹿さんなことと、日本出身の宇宙飛行士として真田広之が出演していることなのだ。それ以外の特徴?そんなものはない。

火星だかなんだかから採取したサンプルの石粒のから、人類が初めて生命を発見するところからこの作品は始まる。

地球外生命体との人類初の出会い。そんな地球外生命体は単細胞生物でネバネバしていてシュワシュワもしていて、最終的には凶暴なイカの化け物みたいな存在に変わる。

そんな化け物イカに一人づつ襲われて命を落とすという、実にどこかで観たことがあるような話の流れなんだけど、本作の特徴である宇宙飛行士たちの馬鹿さ加減は、そのイカの駆除対応で完全にヘマをやらかし続けるところにあるのだ。例えば非常に危険性が高いと思われる未知の生命体を、簡易的なラボで育てはじめちゃったり、成長して焼けなくなった化け物イカを無理矢理焼き殺そうとして反撃されて口から入り込まれるとか、まあそういうのだ。

地球外生命体による、人類への攻撃というインシデントの発生に対し、初動対応の失敗から始まり、次から次へと凡庸なミスを冒し続けて被害の局所化に失敗し、被害が拡大し続けるというのは、他にも何かに似てるよねーと思ったら、サイバー攻撃の発生に対して初動対応を失敗して、最終的には被害が甚大になる、というアレに共通する部分があるのだった。

なので本作はサイバーセキュリティ従事者に観て貰えばまあ楽しめる部分はあるかもしれないけれど、まあぶっちゃけ駄作です。イカが好きな人は観てね。