一生分食べてしまったのかもしれない

 いつのころからか、豆腐が食べられなくなった。

 子供のころは湯豆腐に冷奴に麻婆豆腐・・・とにかく豆腐は好き嫌いの激しい子供だった僕にとって数少ない「ちゃんと食べられる食べ物」のひとつだった。

 でも今は食べると急に吐き気がしてしまう。原因はまったくわからないけれど、憶測では「豆腐アレルギー」「トラウマ」のどちらか。でも自覚はない。他にも駄目になった理由としての憶測はいくつかあるけれど、その最もたるものがひとつが・・・一生分の豆腐を食べてしまった説。

 何の根拠もありません。でも、一生分食べてしまったのかもしれない。

 でも、考えてみれば一生分ってどのくらいなんだろう。一生分を考えてみると面白い。何回呼吸したのかとか、何回心臓の鼓動が鳴ったのか、何回「こんにちわ」を言うのだろうかとか、僕は何回人のことを好きになって、僕はいったいどのくらい人のことを嫌いになるのだろう。どれほど旅行をして、どれほど転んで、一生涯かけていくらくらいのお金を稼いで、いくらくらいのお金を使うのだろうか。

 いつか死んだときには、そんなデータがすべて自分にだけ公開されたら面白いのになぁ。

 そんなことを表参道駅近くのドトールの3Fから、セントグレース大聖堂を眺めながら考えた。