レビュー:信長の野望 大志

P1000154_JPG

私はコーエーテクモHDの株主の一人でもあり、また信長シリーズ全作をプレイしてきた古参のユーザーの一人でもある。一言で言えばシブサワ・コウのファンなのだ。

光栄からコーエーテクモへ。コーエーテクモは上場企業として利益を追い求めるがゆえに、グローバル展開が難しい「提督の決断」「太閤立志伝」「蒼き狼と白き牝鹿」などのナンバリングタイトルを捨て、ドル箱の無双シリーズを除いては、シミュレーションゲームとしては信長の野望シリーズと三国志シリーズに注力してきたはずだ。

そして糞藝爪覧(くそげーつまらん)騒動に代表される、ナンバリングタイトルとしての三国志シリーズの没落。信長の野望シリーズは、利益追求をモットーとせざるを得ないこの会社においても、唯一の良心だと思っていた。

ゆえに1.5万のトレジャーボックスを買うくらい期待していたのだ。期待していたのだが…今作はクソゲーにほど近い出来、いや、クソゲーだ。

前置きが非常に長くなったが、本作が以下にクソゲーつまらんなのかについて記載する。

全般

今作の発表が行われる中で、PC版やコンシューマ機版以外にもスマホ版のリリースと展開が伝えられていたが、よもやスマホゲームが前提のものをPC版やコンシューマ機版で出してくるとは思えなかった。前作のようにPC版をベースとして画面転送の方式でスマホ版をリリースするものと思っていたが、完全にその推測とは真逆のものであった。ある意味イノベーションだし、ある意味詐欺じゃないかと思う。

UIもスマホライク、実行可能なコマンド類もスマホライクで超簡素化されていてほぼ何もできないに近いうえに、鬱陶しい作業系のみが残ったままで中途半端。最終的には内政、寡兵、評定等全ての操作を委任して外交と合戦だけを手動で行うゲームになる。前作までの良さは何も引き継がないで、ゼロベースでクソゲーを完成させたんだなという点は関心はする。

内政

前作までの箱庭要素ゼロ。商圏を広げるために進出するか投資するか、農業は開墾、土作り、種まき的な季節ごとコマンドがあるが基本はポチポチの作業系。単なる作業でしかなく、戦略性は要らないし、国を富ませて大きくしていく内政の醍醐味が全く感じられない。よほどの作業ゲー好き以外は、内政を委任して放置することになるのではないだろうか。

外交

他大名と親善して友好度を高め、同盟するか婚姻するか、従属させるか臣従するかのみ。他に物資の提供依頼があるが、旧三国志の頃に効果的だったおねだりではなく、家宝との交換を前提としている。つまり単なる物々交換でしかない。脅迫して金よこせとか、臣従先の親に金をせびる要素なし。

前作までにあったような、朝廷との親密度を高めるための朝廷工作も無い。一定以上の金を持っていれば、朝廷側から金をせびりにやってくる。そしてら金を渡せば、すんなり官位が貰える。これは朝廷の腐敗っぷりを描いたつもりなのだろうか。朝廷の存在を馬鹿にしているとしか思えない。

また、そもそも誰がどの官位についているかはどこにも記載がなく分からないし、家臣に官位を付与したり、朝廷が他大名との間に立って休戦工作をすることもない。朝廷の権威の没落を描いたつもりなのか。いや違うだろう。これは、スマホゲーマー向け簡素化クソ仕様万歳なのだ。

人事

忠誠度のパラメータはあるが、低くても出奔したり裏切られることもないし、大名が良い茶器を持っているだけで忠誠度が高まるという意味不明な仕様がある。家臣に茶器を見せびらかして忠誠心が高まるのであれば、松永久秀は戦国時代最強のカリスマであるし、今井宗久や千利休なんて大名クラスの家臣を抱えられることになるだろう。歴史シミュレーションゲームとは一体なんだったのか。

また、他大名を滅ぼしたあとで、その大名や家臣たちも基本的に忠誠度が高い状態で家臣化する。恨みとかないみたい。また正室に加え側室を持てるようになってるが、そもそも側室を持てるのは大名だけっぽいし、側室を持つことにより何かが変わるわけでもなさそう。

あと家宝は商人から買えない。彼らが稀に献上してくるのを待つか、家宝を持つものを殺して奪うか、家臣にして家宝を巻き上げるしかない。茶器以外の武具類の家宝による能力値の向上は、属人化している。つまり松風ならば前田慶次が持たないと意味がない。松風があるか知らんけど。

城関係

築城はできるが、政策面におけるメリットが殆どなにもない。また農民も流民も集まりにくいので、軍事拠点としても微妙でしかない。改修は城の防御力を高めるのみで、前作にあった石垣や門、曲輪などの城まわりの増築要素は何もない。

調略

そんなコマンドは存在すらしないので、他大名の家臣と密談して引き抜いたりすることはできない。ゆえに木下藤吉郎が竹中半兵衛を調略することはできないので、攻め落として家臣に加えるしかないのだ。

その他謀略系のコマンドもないので、松永久秀プレイも捗らないと思う。

合戦

最初だけ面白く感じたが、目新しい要素は何も無かった。何度も何度も同じような合戦の繰り返しとなると苦痛でしかないので委任したくなるが、委任はできない。

合戦の場所により、その場所に入ることができる兵数に制限が設けられており、圧倒的物量で押し寄せてもその兵数制限の中で戦うハメになる。そして負けると圧倒的物量は霧散する。たくさんの兵を持つ意味が何も無い。物量ゴリ押しプレイができないので、天下統一までの道のりは長い。

そして兵糧の消費量が半端なく多いのと、合戦を長引かせると民の忠誠心が下がりまくるので、こまめに講和しつつ、講和期間が明けたらまた攻める、を繰り返して相手大名を滅ぼさなければならない。これがまた実に面倒くさい。

幕府

そんなものは存在しないような。奥州探題とか関東管領とか田舎侍が名乗りをあげているのを見たことがあるが、それだけでしかない。そもそも誰がどのような幕府の要職についているかを一覧で見る機能はない。

大志

本作の売り要素は「大志」という、各大名の志によるAIの違いだったはずだが、志を感じたこともなければ、志によるドラマチック展開も見たことなない。

HEROZとの資本業務提携は何だったのかな。

総括

シミュレーション要素がほぼ欠如しており、歴史シミュレーションゲームとは言えなくなってしまった。そしてキャラクターゲームでもない。また、ゲームとしての機能もその豊富さが大幅に削ぎ落とされ、スマホゲーマー向けのポチポチ作業ゲーに成り果てた。

また、今後リリースされるであろうPK(Power UP Kit)で通常機能を拡充するという従来のPK商法方式なのかもしれないが、この作業系スマホゲームシステムが基本システムであるならば、PKによってゲーム性が大幅に高まることは期待できない。

以上のように、現段階における今作の評価は「圧倒的に不評」だ。クソゲーつまらん、ということ。以上。

コメントを残す