レビュー:ウディ・アレンの夢と犯罪(監督:ウディ・アレン)

ユアン・マクレガーとコリン・ファレルという豪華キャストの競演。そして原題であったcassandra’s dreemが完全に無視された微妙な邦題・・・。

それはさておき、ウディ・アレン作品だから安心、なんて思ってほんわかムードで観ていたら痛い目にあってしまうのが本作。ほんわかムードなんてとんでもない。自らの過信からギャンブルで莫大な借金を負った弟が、その人生の歯車を狂わせ始めたあたりから漂う陰鬱さったら、もう、たまらない。見てらんない。

兄弟は借金の肩代わり&兄の新規事業の投資資金の工面をしてくれた伯父にそそのかされ、ある人物を殺しにいかなければならなくなってしまう。彼ら兄弟はもちろん殺し屋でもなんでもなく、いたって普通の感覚の持ち主。人を殺すなんてとんでもない!あり得ない!と拒否し続けるわけですが・・うん、もうこのあたりから完全に彼らの立場が自分だったら・・に置き換えられてしまうんですね。もう、たまらなく心がザワザワと音を立て始めるわけです。そんなのダメだよ!やめておきなよ!もっと他の手があるんじゃないの!って。

一度狂った歯車は元には戻せない。一線を越えてしまったら、あとは突き進むしかなくなってしまう。でも人間って、いや彼ら兄弟みたいなごく常識的な感覚の持ち主って、過去を振り返らずにひたすら未来へ突き進めるほど強くはないんですよ。

なんとなく、自分もきっと同じだろうなあって。前進するだけなんて無理だなって思いましたね。

決してハッピーエンドではありませんが、観ていて心がざわざわする良作ですよ。お奨め。