レビュー:ジョアン・ジルベルトを探して

恵比寿ガーデンシネマで観た。

平日のガーデンシネマといえば有閑マダムの溜まり場になっているわけだが、今回は公開初日だったのかいけなかったのか、平均年齢が70歳くらいなんじゃないかというくらい高齢の方が多く、劇場内には加齢臭が漂い、ドキュメンタリー形式の抑揚のない展開の心地よさにウトウトする方ばかりという惨状だった。たぶん俺がその場では一番の若者に違いない。他の方は現役でジョアン・ジルベルトの音楽に触れ、人生を通じてボサノヴァしてきた方々だ。

今年の7月に亡くなったジョアン・ジルベルト。ボサノヴァの神様と言われ、音楽ジャンルでいうところのボサノヴァの創始者であるジョアンは、晩年は公の場に姿を表さず、隠遁生活を送っていた。

本作はドキュメンタリーであり、監督自らがそのジョアンの足跡を辿る。BGMはもろん終始ボサノヴァである。

最終的にジョアンに会えたのかどうなのかはネタバレなので書かないが、ジョアン・ジルベルトの生涯にスポットライトを当てることは、即ちボサノヴァの歴史を紐解くことに他ならなかった。そしてボサノヴァを見直すことに他ならない。

かつてのジョアンの知人たちは、当然ながらに年老いていたが、それぞれが抱える情熱のようなものは、色褪せたようにはみえない。

ボサノヴァ。その言葉の通り、ボサノヴァは未だに「新しい傾向」であるのだ。ボサノヴァは、その独特のリズムが生み出す本質をもって、今も色褪せずに聴衆の心を打つ。

それを知ったときに、このドキュメンタリーはジョアンに会えても会えなくても成功なのだと理解した。観る者にとってはボサノヴァがあり、ブラジルの風景があり、ボサノヴァを愛する人々がいる。それがジョアンの遺した全てなのだ。