レビュー:フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法 (71点)

Florida
目黒通り沿いにある CLASKA のルーフトップにて観覧してきた。CLASKAでは、ここ数年は、毎年ルーフトップシネマを開催している模様だ。真夏の夜にビールなどのアルコールを飲みつつ、風を感じながら映画を観るなんていう夢のような時間を過ごすことができる。

ルーフトップシネマでは、全国を旅する映画館 Kino Igru さんの卓越した演出技術により、映画を観る上で快適な空間を作り上げ、そして単なる壁に投影したとは思えないような、非常に鮮明な画質で観ることができた。そして、これまたONKYOの技術者さんによる、野外にも関わらず、音の立体感を消さず、そしてセリフがはっきり聞こえるといった良質な音を聴くことができた。

特に音が素晴しかった。野外であり、目黒通りという交通量の多い幹線道路沿いにも関わらず、このような明確な音を作り出せるのはなぜだろう・・

と思い、音響担当の方に直接話を色々と伺ってみたところ、それは普通の映画館や屋内での音響技術のそれとは異なり、そして単純に機材が良いとか自動調整してくれるいう話ではなかった。音量は適切に抑え、全てのスピーカーから同時に音を発しつつ、音圧と音域を調整し、音の位相をも作り上げてしまうという、おそらく類稀なる音感と才能、そしてそれを実現する技術がもたらす魔法だった。すごい。

上映作品本編について。これはミニシアター上映作によくあるような話であり、決して立派だとは言えない親と、その子供、そして子供の友人たちを描いたものだ。

その舞台はディズニーワールドのほど近くにある、フロリダのモーテル。このモーテルには、1日35ドルの宿泊費を払うことにさえ苦心するような低所得者が集まっており、それぞれの家族が宿泊者としてではなく、定着した「住民」として、それぞれのありふれた日常を送る。

大人から見れば非常に劣悪とさえ思える環境においても、子供たちはその無邪気さを持って、全てを遊びの場に変えることができるが、子供の無邪気さとは神聖なものでありながらも、破壊的なものであり、大人たちの関係性に大きな軋轢を生じる結果を作る。

そして迎えるラストシーンで、この映画はBGMを伴って、リアルに加速する。35mmフィルムカメラにて撮影されていた本編だが、ラストシーンだけはiPhoneでゲリラ的に撮影したらしい。通常許可は得られない場所なのだ。映像とBGMのの切り替えによるラストシーンへの収束には、鳥肌が立つ何かがあって、これがこの監督の作品の真髄なのだと思う。

大人の視点で観て見れば、いわば尻切れとんぼに思えるかもしれないラストシーン。そこを子供の視点で観て観たらどうなるだろう?かなり違った見方ができるし、最後にあの場所を選んだ理由もよくわかるのではないだろうか。

おそらくあの場所は、二人の夢が叶う場所なのだ。