偏屈な独居老人の繰り返されるありきたりな日常を淡々と描く作品。目的もゴールも何もない作品だが、人物描写に優れた良作であり、私はこういった作品が大好きだ。
健康体そのものの愛煙家独居老人は、ある日突然と倒れてしまうことで自らの死を意識し始める。
形あるものが必ず迎える、死。やがて誰しもに訪れる、死。
人はやがて訪れる死を意識したときに、何をすべきであろうか。
そんな死に対して実に緩やかに、優しく向き合う方法を、この作品は主演のハリーを通じて教えてくれている。ガサツでぶっきらぼうに、そして繊細に。
監督として著名なデヴィッド・リンチがフツーに俳優として出演していることも驚きだが、主演のハリー・ディーン・スタントンは、どうやらこの作品が遺作となったようだ。
勝手な解釈だが、最後まで見事に俳優人生を成し遂げて、穏やかな死を迎えたのではないだろうか。