日本一の高さを誇る富士山。といっても登山初心者にも夏山の富士山は易しい。
そんな富士山にはじめて登ったのは小学校のころだった。八合目で泊まりご来光を見たのだけれど、ご来光よりも星空が美しかったのを覚えている。
齢30を超え、中年の仲間入りを果たそうとしている自分。いやもうすでに果たしているのかな。この夏はなんだか猛烈に「なにか辛いことに挑戦しなければならない」という感覚に襲われていて、その結果として富士山に登ることにした。
辛いことに挑戦しなければならない。そんな風に思う理由は、辛さを乗り超えないと自分は成長できないと思い込んでいるからだと思う。考えてみればこれまでもたくさんの辛いことがあったからこそ、今の自分がいるようにも思うし、これからの自分を作っていくのに必要なことだから。日々の生活の中で特段辛いイベントが起こらないのであれば、自主的に辛いイベントを起こすこともひとつの努力じゃないのかな、と。
そんな思いで富士山はバスを予約した当日に登ることにした。一応それなりの山に登るんだからとちゃんと準備はしていた。その前の週には陣馬山から高尾山へ7時間かけて縦走もしたし、ザックやウェア、ヘッドランプもそろえたし、登山靴とレインウェアは友人に借りた。
辛さを求める。でも辛すぎると乗り越えられない。自分に見合った適度な辛さ。それがナイトハイク。夜22時に登り始め、8合目もしくは山頂でご来光を見て下山するという、いわば日帰りコースといえるもので、宿泊はしない。それに挑戦することにした。一緒に登りたい人も登ってくれそうな人もいないし誰かがいると甘えが出そうだったので一人で。
22時ころに5合目着。30分ほどこれまでやったことないくらいの柔軟体操をして身体を馴らす。22時30分ころに登山開始。
5~6合目は下ったり上ったりの道でそれほど険しくない。初装着のヘッドランプの調子を確かめつつ、自分でも遅すぎると思うくらいのゆっくりペースで一歩づつ踏み出す。ヘッドランプは思っていた以上に快適で、真っ暗ながら足場の不安は感じられない。
6~7合目で濃霧が発生する。頭の上からライトを照らしても霧にライトが反射する関係で足元が見難い状態。だからライトを首にかけてみた。足元が途端に見やすくなる。どんなときも試行錯誤って大事だな、と。
7合目。このあたりで明らかに酸素が薄いなってことを身体が感じ始める。呼吸が乱れると酸欠が起こる。酸欠は高山病を引き起こすかもしれない。なんて思いながら常に深呼吸しながら進む。空気がおいしい。酸素が薄い。空気は美味い。酸素も美味い。自然を身体で感じるってのはこういうことだなあ、なんて考えながら淡々と進む。
7合目~8合目は岩がゴツゴツしていてロックライクミングとまではいかないものの、なかなかハード。
8合目。極寒にて持参した衣類、レインウェアをフル装備する。7合目くらいまでで結構汗をかいたので、それが冷えてますます身体を冷やす。最初のほうは若干寒くても薄着で登り続けたほうが後々寒くなくなるんだなあと少し後悔する。山小屋できつねうどんを食べ、コーヒーを飲む。身体が温まる。
この頃、時間はam3:30くらい。中途半端に登る途中でご来光を見るよりも、ここで見たほうが良いなと思いご来光を待つことに。自分の目が悪くなったからなのか、そらが曇っているからなのか、それとも心が曇っているからなのかわからないが、小学生時代に見たような満天の星空は広がっていなかった。まあ、たぶん目が悪くなってるから。
そしてam4:50前後にご来光。雲がまるで海原のように広がり、山並みがまるで島のよう。(見たことがないけれど)天国の風景。そんな中に差し込む太陽の光。輝き。素晴らしいとしか表現のしようがない世界。大自然の偉大さと、その中にいる小さな自分の存在を実感する。登ってよかったと感じる瞬間でもある。
その後写真とってくださいと2回ほど声をかけられ、逆行だからフラッシュたいたほうがいいですよとか言いながら撮り、結構きれいに撮れて喜んでもらえたりしてウキウキしながら登り続ける。
8合目~山頂までは登山渋滞。夜間登頂に備えて眠ってなかったから眠さがピークに。
山頂についたのが朝7時。
山頂の山小屋でカレーライスを朝食に。山頂でカレーライスを食べるのがカレーマニアとしての目標でもあったので。味はまあ普通。
twitterで「富士山頂なう」とかつぶやいたら同僚が「うちの妹も登っているはずですよ」と。まさかねー、と思いながら周りを見回したら彼の妹さんらしき人がいる。といっても彼の結婚式で一度見かけたくらいだからうすら覚えで間違いかもしれない。
せっかくなので声をかけてみたら本人でした。奇遇にお互い驚く。いや自分はよくあることなのでさして驚かなかったけれど驚くフリをしてみる。ドラマならば恋に落ちるケース。現実なのでそんなことは起こらない。
その他頂上からは実家に電話したくらいで、バスの時間も考えて早々に下山。4時間弱で5合目まで降りてきたのでバスを2時間ほど待つことになったけれど、さすがに眠かったこともあり5号目で仮眠ができたので満足。河口湖畔の日帰り温泉に入って帰宅。
なんていう具合の富士登山だった。富士登山は足腰の疲れよりも、酸素の薄さであったり、気温の低さであったり、そういうものとの戦いで、普段の登山に比べたらやはり生死により近いところで戦えるような気がするし、それなりに辛い。でも登山道が整備されていて、登りやすい山で、初心者向けの山だとも思うし、なによりご来光は美しく、山頂に到達したときの達成感は大きい。
この夏にもう一度くらい登りたいなあ。
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雑学本としては良書
読みましたよ!!







