ハーバード大学在学中にいまや世界で最も巨大なSNSであるFacebookを作った男、マーク・ザッカーバーグ。映画”ソーシャル・ネットワーク”は彼の成功を描きつつ、ややストーリーに脚色を加えつつも、成功を取り巻く人間模様をほぼ原色で描いた作品となっている。
成功にスポットライトを当てられがちなこの手の映画と異なるのは、それは成功者である主人公のザッカーバーグが「あまりよく描かれていない」ことにあると思う。ていうかちょっと嫌な奴にしか写らなくて、極端に言えば「ザッカーバーグは糞野郎!」って声が各所で連呼されても仕方ないんじゃないかってくらいだ。
けれど、この映画がひきつける魅力は一体なんだろう。それは、彼本人とその成功を象徴するような「集中力」と「燃えたぎる情熱」が、ザッカーバーグ役のジェシー・アイゼンバーグから感じ取れるからだと思う。それはごくありふれた「好きなことを楽しそうにしている姿」ではなくて、盲目的にfacebook作りに取り組む姿勢。狂気でもあり、何かが憑依したかのような、狂信的なオタク像にも写る。気持ち悪い、の一言で突き放すことさえ可能な姿なんだけれど、その姿にこそ起業家魂を震わせるような、何か熱いものを感じてしまう。
その結果、彼は全世界に5億人ものユーザーを抱えるSNSを誕生させた。それは痛快さとはかけ離れていて、やはり異様なことなのだと思う。そして、その異様なことを成し遂げた異様な人物を取り巻く人々は、ごく普通の人に見える。極論を言えば、普通と異様、そのギャップが、人間関係の亀裂となったわけ。
結果として「ザッカーバーグは糞野郎」と思われかねない。ただ彼は、実に「悪気」がない。悪気があるように写る、糞野郎のザッカーバーグ像は単に「仕事中」であっただけで、その「仕事中」の姿が、周りの人には理解されなかっただけなんだと思う。
単なる糞野郎のサクセスストーリーに写るか、それとも一人の仕事の鬼の成せる業と写るか。それは観る人によって違うところでもあり、それこそがこの映画の真の魅力でもある。
