レビュー:ガラスの城の約束

佐倉城址
恵比寿ガーデンシネマにて上映される映画では、過去にハズレをひいたことが殆どない。なんてことのない、心にあとを惹かない映画をも魅せるその作品選びのセンスというか、そのあたりが素晴らしい。映画の究極系は、日常そのものだと思うし。

ということで、本作も心に残らない、いやあとを惹かない割にはやんわりと記憶に残るような良い作品だったわけだけど、平日に仕事を休んで観てきた。

映画そのものは、端的に言えば「定職につかないアル中の父親と絵描きでアーティスト気取りのメンヘラっぽい母親によるユニークな教育を受けたわりにはフツーの価値観を持ち得た主人公が、フツーに幸せな結婚することになって過去を振り返ってみれば、やっぱり親の教育スタイルはヘンテコだったし金も盗られたし許せないこともあったけど、結局親は親だから全部は憎めないし、ダメな親でも良いところも探せばたくさんあるよね、そんなこんなでやっぱり自分はいまのフツーに笑い合える環境が幸せだ」と主人公が実感するまでを描いた映画である。全く端的に言ってないけど。

ぶっちゃけ主人公の気持ちはどうでもいい。どうでもいい!!が、これを親の視点で観るとまた観え方が全然違うのだ。親のエゴを子供に押し付けることは決して愛情ではないわけで、いくら最後に子供が親のことを想ってくれたとしても、こりゃだめでしょうねーということをマジマジと見せつけれくれる映画なのだ。

なので私個人の意見としては、この映画は親になる人、あるいは親になった人向けです。親のエゴにより歪んだ感性を持たされた人向けではなく、反面教師として、親が親たるために身を引き締めながら観るのもまた正しい見方かもしれない、ということです。

問題は、本作の原作本は全米で350万部のベストセラーになったという点。どっちの視点で共感を生んでベストセラーになったのかを考えたとき、彼の国であるならば、それは子供の視点、つまり主人公の視点であるのだろうと考えられるわけで。つまり、同じような境遇の子が多いのかもしれないな、と。

上記のように、本作は日本とアメリカとでは、また観られ方が違う気がして、そのあたりも踏めて観るのもまた一興なのかもしれないよ。