レビュー:東京クルド (97点)

緊急事態宣言の最中の那覇出張に行った時に、あまりにもやることがなくて、宿泊していたハイアットリージェンシー那覇のすぐそばにある桜坂劇場にて鑑賞した。心に刺さるものがあり、素晴らしかった。観てよかった。

素晴らしいドキュメンタリー映画で、観て本当に良かったと感じているのは、あまりにも自分が無知だということがよく分かったからである。私は、トルコ人とクルド民族との関係や、日本における入国管理上の諸々の問題も全然知らなかった。

本作は19歳のクルド人の二人の青年を中心に、彼らの日常と、いわば不法滞在であるクルド人としての苦悩を伝える、純然たるドキュメンタリー映画である。

法治国家である日本では、適切な査証がなければ働くことはもちろん、居住することは当然にできない。

クルド人の青年二人は、そのご両親がクルドとトルコとの民族紛争の影響により、身の危険を感じる、とても怖い思いをしながらトルコを脱出し、おそらく観光ビザで来日し、何十年も不法滞在している。

同じような境遇で、来日後の不法滞在中に生まれた子供たちは他にもたくさんいる。彼ら彼女ら、そして不法に入国したそのご両親は、日本国籍を持たないため、もちろん働くことも居住することも許されないのだ。

この立場では、本来は入国管理局に収容されなければならないが、不法滞在者全員を収容するわけにもいかず、入国管理局は「仮放免」という制度を持って、一時的に収容しない、という決定を下している。

ここで問題なのは、仮放免は一時的に収容を停止し、身体を拘束しないという許可であって、居住してり就業することを許可しているわけではないのだ。

であれば彼らは、どのように自活し、暮らしていけば良いのか?それが本作のテーマでもある。

入国管理の観点では、収容や仮放免は、あくまで不法入国者を祖国へと戻すために行われる、一時的な処理にしかすぎない。

今回のようなケースにおいても、難民認定されれば永住許可の一部要件緩和などが行われるようだが、法治国家として、そして日本の国民を守る意味において、簡単には難民として認定できないことは十分に理解できる。

一方で、親子二世代に渡る、とても長い期間、仮放免という不安定な立場で過ごさなければならない人たちがいることを、私たちは忘れてはならないのだ。彼らには、未来を考える余地すら与えらていないことも。

彼ら彼女らは、とても怖い思いをして日本に来ているのであって、帰りたくても帰れないんですよ、祖国に。

そして、それこそ未来に希望を持って生きて欲しい若者たちが、住めない、働けない、そしていつ収容されるかもわからないといった大きな不安を抱えながら、今日という日を日本のどこかで迎えているわけで、子供たちがこんな思いをしなければならないのは、とても不幸なことだと思うし、なんとかしなければならないと思う。

かといって入国管理、永住就労における諸要件は、緩和できるものではない事実もある。難民受け入れにおける諸問題は、欧州のケースにも学べるものが多く、より深い議論が必要ながらも、緩やかに衰退しつつある日本の活路は、諸外国の人々を積極的に受け入れる体制や法制度をはじめとした諸制度を整備することにあるような気もする。

とかくこの件は、結論を出すのは容易ではない問題だが、私が本当に、本当に心苦しく感じたのは、将来有望な、とても純粋なクルド人の青年二人が、夢を描いて生きることが許されていないという点だった。ここを考えるだけでも、映画を観ながら何度も頭を抱えてしまったし、涙ぐんでしまった。本当、なんとかできないだろうか。