映画「バクラウ 地図から消された村」を観た

一言で言えば見所がたくさんあって良かった。

面白かったかと言えば面白いんだが、それよりもこのような映画が世の中に出てきて、それが普通に観られる世の中そのものが良かったな、と。

なので今回は、この「良かった」なる曖昧かつ適当、稚拙、そしてシンプルな言葉を使ってレビューしたい。

まず個人的には、非常に馴染みのないブラジル映画である。映画といえばハリウッド、そして欧州諸国、アジア諸国のものはよく観るものであるが、南米なのだ。冒頭の葬儀シーンからして、純日本人な私としては、その文化の違いをまじまじと見せつけられて実に良かった。

冒頭といえば、オープニングにスタッフロールのようなものを少しつけてくるあたりや、10社を超えるであろうスポンサーなんだか関係会社なんだかのロゴを表示してくるあたりも良かった。このまま映画が終わるんじゃないかとも思ったが、そう思う時点で私はハリウッド的な映画の構成に慣れ親しみすぎているんだと痛感した。

牧歌的なストーリーで、全く展開が進んでいない雰囲気さえ感じさせてくれるわりには、後半になって、その牧歌的な雰囲気の背景にある狂気をちらつかせてくれるあたりもとても良かった。展開が読めそうで読めない、そして驚きがありそうでないのも魅力。

バイオレンス作品に傾いた途端、何よりもバイオレンスしているところも良かった。あんなに見事に頭が吹っ飛んだシーンはこれまで観たことがない。

また、全てを語らずとも、描写そのものでその意味を誰にでも理解させられる点は、監督や脚本の優れた手腕が感じられて良かった。これは映画が映画であることの魅力だ。

なお、Netflixでは、本作品が「SFサスペンス」にカテゴライズされていた。SFなシーンはどこかな?と楽しみにしていたが、たぶんそれは「空飛ぶ円盤」型のドローンが映る点くらいしかない。

つまり全くSFしていないのだが、だからこそこの作品に出会えたともいえるので、そんな適当なカテゴライズそのものも良かった。

映画そのものに対する価値観は、多種多様であることを学べる作品でもある。ハリウッド映画のアンチテーゼと採れば、そう採れなくもない。一風変わった映画、というやつを観たい人には是非おすすめしたい。SFサスペンスではない点も含めて。

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